Date:2023-06-29
Interview / Terumi Asato “THE PATTERN”
THE PATTERNを主宰するシンプル企画 パタンナー 安里輝美さんにお話を伺った。BARBEとは2018年から共に“パターン”を中心とした事業を進め、沖縄や台湾にて様々な企画提案とプロダクトを展開する。
Terumi Asato – 安里輝美 biography
世界的に著名な日本人を多く輩出している文化服装学院を卒業後、東京での企業を経て、故郷である沖縄にて、服飾・縫製企画会社であるシンプル企画を設立。2019年からパターンメーカー事業“THE PATTERN”を立ち上げる。アパレル生産管理の現状と解決や、パタンナーの役割など、物事をシンプルに捉え企画する。
パタンナーは“つなぐ”仕事
パタンナーの仕事は、メーカーやデザイナーからデザイン依頼を縫製者へ伝えるための設計図作りです。デザイナーの目的や意図を汲み取った“デザイナーに向けたパターン作り”と、仕上がったパターンでストレスなく効率よく縫える“縫製者に向けたパターン作り”の2つの方向性を同時に考えます。
デザインが良くても服が体にストレスをかけてしまったり、すぐに着れなくなるような設計では本末転倒です。また、縫製へお願いした際、縫いづらさや難易度が高い設計では時間や労力がかかり、現場のストレスにつながります。
パタンナーはメーカーやデザイナーと縫製業者のつなぐ、重要な役割を担っています。
パターンや縫製を見える化すると面白い。
一般的にファッションやアパレル業界は煌びやかなイメージで、表立つのはメーカーのブランドネームやデザイナーが立つことが多く、商品についての説明も素材についてはありますが、パターンや縫製についての紹介されているのをあまり見かけた事がありません。
実はパターンや縫製もとても面白いんです。縫製について言えば、縫い目一つ一つにその人の人柄や作業への想いが縫い込まれていたりします。自信を持って縫った縫い目と自信なく縫った縫い目は明らかに仕上がりが違っていて、縫製者のその日の体調や悩み事などもその縫い目に現れる事もあります。
私が作るパターンはそういった縫製者のストレスを少しでも軽減することで、より良い商品を作る事はもちろん、縫製という仕事の面白さや楽しさを感じてもらう事が目的だったりします。
パタンナーから見たものづくりの役割
私自身の“ものづくり”については、目的のある依頼に対して、技術の提案を行うことが私の役割になっているので、私自身が作りたいものっていうのがあまりないんです。
こういうのが作りたい!という熱い想いがある人の依頼に惹かれて、じゃあこうしてパターンを作ったらいいんじゃないかなぁという様に、私も徐々に熱を帯びてくる感じです。
例えば、テキスタイルデザインを目的に商品を開発したい人には、デザイン性が崩れないように切り替え線を少なくしましょうとか、こういうパターンのシルエットでテキスタイルが見えるようにしましょうとか、そういった協業でのものづくりを行なっています。
THE PATTARNが進める新しい服づくり
先日、THE PATTERNは、台湾の老舗ブランドであるMOGUと商品開発を行いました。「ポケットのある暮らし」というテーマのもと、デザイナーとパタンナーが共にアイデアを出し合いながら、ディティールの細かな調整を行い、縫製者と力を合わせハイクオリティな商品群の生産を行いました。
また、MOGUは、商品をリリースの際、THE PATTERNの紹介を行ってくれています。このように商品の背景になるパターンが表に出ることはあまりないように思います。パタンナーや縫製者が表立つ事は、それぞれの製品に対する想いや責任が垣間見れ、製品クオリティの向上につながる“新しい服づくり”となるのではと期待しています。
リネンコート / 蘑菇 MOGU and THE PATTERN
事業を縮小していくという“シンプルな働き方”
シンプル企画の名前の由来は、起業当初、アパレル業だけでなく、世の中の事柄や仕組みの複雑さをよりシンプルに進めれたらとの想いをそのまま企業名としました。
以前は、沖縄のアパレル業界のこと、縫製の仕組みを良い方向へ変えて行きたい!という情熱があったりしましたが、いろんな経験を通し、仕事や人生にとって大切な事は、家族や自分自身の幸せなんじゃないかな、と思うようになりました。結局のところ、みんながそれぞれ自分自身が幸せだと思うことをやっていけば、世の中は平和になるのではと思ったりします。
今、一周まわって原点に立ち返った気がします。やりたい事をとことんシンプルに突き詰めていった結果、残ったのがパターンだったという事です。
仕事は“不安”か“愛”かに分かれる
世の中の仕事は、“不安”か“愛”に分かれるように思います。それは、生活がかかっているという不安からくるマイナス指向的な仕事、もう一方は、自分自身それが好きで夢中になって打ち込むプラスに働く仕事。もちろん後者の方がより良い仕事やものづくりを行うことができます。この違いは、自分自身と仕事の向き合い方になのかなぁとも思います。
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